宅地建物取引士が賃貸保証会社・家賃保証会社についてわかり易く解説

不動産賃貸管理業に携わり10数年の宅地建物取引士が賃貸保証会社・家賃保証会社の実態について様々な角度からわかり易く徹底解説しました。
初回保証料(保証委託料)?初めて聞く言葉だな?契約時に見積もりの中に保証会社費用や初回保証料といった名目で数万円と記載してあり非常に疑問に感じる方も多いはずです。

連帯保証人は自分の親族がなってくれるのに何故?とさらに疑問が深まります。

保証会社とは・・?保証会社は必要・・?保証料の適正な金額は・・?そんな疑問を解決に導く特集記事です。

賃貸保証会社とは(家賃保証会社とは)

近年は、賃貸アパート・マンションを借りる際に、不動産会社から保証委託契約を付ける事が必須だと言われるケースが増えています。

以前は連帯保証人が必須というのが常識ととらえている方も多いかもしれません。もちろん従来の連帯保証人がいることで 申込みの審査が通る形態もまだ残っていますが、保証会社が介在する契約が主流になりつつあるのも事実です。

・保証会社が増えた理由①

日本経済停滞が長引き賃借人の滞納が目立つようになり、賃貸人・管理会社等が滞納通知や未払い賃料回収業務の比重が重く なってきた事。

さらに経済の停滞は連帯保証人にも影響している場合もあり、保証人債務を支払う能力が無くなっている可能性が高くなっている事が根本原因です。さらに核家族化により保証人を極力頼みたくない人や親族に頼んでも保証人引き受けてもら えないケースも増えています。

・保証会社が増えた理由②
連帯保証人も様々な人がいます。賃貸人側(貸す方)としては安心して貸せる人を当然希望します。その連帯保証人を書面等で審査(判断)するのは賃貸人となります。では何処を判断基準にすれば良いか?非常に難しい場面に多々遭遇します。
仲介業者も詳しく調査する事は出来ません。そこで保証会社が賃貸契約に介在し一定の審査を行ったうえで保証委託契約を結ぶことで申込みを承諾するか否かの判断がスムーズに行えることになります。不動産仲介会社としても紹介した賃借人が滞納したとしても責任問題まで発展するリスクが大幅になくなります。
賃貸人・不動産仲介会社には非常に大きなメリットがあるのです。

・保証会社が増えた理由③
上記の理由を見ると賃貸人・不動産会社側のメリットばかり目立ちますが、賃借人(借りる方)にもメリットはあります。
既に3親等以内の身内がいない方が保証人がいない契約が可能になります。
実際に連帯保証人を親族にお願いした場合でも断られてしまったり、イヤイヤ引き受けてもらったりすると後々気まずい感じは残ります。
また、不動産仲介会社も部屋を借りる人の責任は負えませんので、物件紹介が消極的になる事も軽減されるため、部屋を借りやすくなる可能性が高まります。また、保証会社からクレジットカードが発行される場合には毎月の家賃支払いによりポイントが溜まっていく等のメリットもあります。

注意点としてはこの家賃保証会社は賃貸借契約において発生する全ての債務を連帯保証する立場という事ではありません。基本的には入居者が支払うべき家賃の保証というのが一般的です。その為、保証委託契約を締結する際に連帯保証人を求められることも珍しくはありません。保証人代行や連帯保証人の役割と思われがちですが厳密にいうと異なります。

賃貸保証会社の審査について

各保証会社にはそれぞれ独自の保証委託申込書があります。独自といっても基本的な記入項目は似通った内容になります。
・基本的な項目
氏名
生年月日
年齢
性別
自宅電話
携帯電話
住所
現在の住まい(借家・寮・自己所有等)
居住年数
家族構成
メールアドレス
勤務先名称
勤務先住所
勤務先電話番号
雇用形態
営業内容
従業員数
勤続年数
年収
入居理由
未成年者の場合親権者同意欄
連帯保証人が必要な場合は連帯保証人の上記内容
連帯保証人が不要で緊急連絡先が必要な場合はその氏名・住所・勤務先・電話番号といった内容が一般的です。

申込み希望者の承諾により申し込み時は、申込者の個人情報が保証会社に送られます。
保証会社は過去に審査を受付した申込者・連帯保証人・滞納者のデータを保有してますのでこれらの過去のデータから申込み時に送られてきた名前、生年月日で検索をかけます。この過去のデータは各保証会社ごとに保管しておりますので、申し込みをした保証会社を過去に利用したことがなければ新規の審査として扱われます。保証会社間では滞納データの共有をしていない為、保証会社によって審査結果が異なる事があります。
全国保証業協会(LICC)で共有している情報は訴訟になった案件、悪質滞納者のデータは共有です。
申し込み中の保証会社を過去利用したことがある場合は、滞納履歴や他の連帯保証人になっていないか、トラブル履歴・滞納の多い職種・支払える家賃価格帯かどうか・身分証明の内容・申し込み用紙の虚偽・申し込み用紙を自書したかどうか・転居理由は適正か等も調べていきます。
保証会社から不動産会社へよくあるヒアリングで、遠方(県外等)から転居する際にはしっかりとした転居理由が無い場合、審査が通らない事が多いです。引っ越してきた後に勤務先を探すという理由は特に審査が通りにくいケースです。
但し、充分な資力がある方は、預金口座の残高証明等の追加書類を提出することで審査を通過する事もあります。

審査に必要な物は

・身分証明書

身分証明は、免許証コピーが多く用いられます。その他は保険証コピーが一般的です。
年々身分証明も住民票を求められるケースも増えてきました。
注意したいケースは免許証記載の住所が現住所でない場合です。何度か転居しているとうっかり免許証の住所変更をしていない場合があります。そうなると免許証は身分証明の役を果たせなくなります。転居する前の現住所は警察署で手続きできますので済ませておきましょう。免許証の代わりに住所を証明できるものがあればよいですが、各社で統一されておりません。例えばパスポート等ではダメな事もあります。
運転免許証などの場合は記載してある右端の番号に免許証の再発行した回数が記載されており保証会社のチェックポイントとなっています。やはりこの数が多い場合は要注意とされるようです。
免許証のような大切な物を管理できない人と見做され、信用ができないと判断される可能性があります。
いずれにせよ身分証明証は必須となります。

・保証委託契約申込書

この書類は、契約書ではない為審査の段階では原本でなくて大丈夫です。但し、契約までに原本の提出が原則として必要です。
その為、この申込書はFAXやメール添付等の方法で提出し、審査を行う事が可能です。遠方にいても大丈夫です。

・認め印
印鑑は審査の段階では不要な場合もあります。しかし念の為持参しておいた方が良いです。
また、「個人情報の取り扱いについて」という同意書など別紙がある場合がありますので、やはり印鑑は持参しましょう。

・連帯保証人又は緊急連絡先への事前承諾
物ではありませんが、まれなケースで連帯保証人欄や緊急連絡先にまだ承諾をもらっていない人の情報を勝手に記入して審査申込用紙を提出する人がいます。
その場合、家賃保証会社から連帯保証人又は緊急連絡先に確認の連絡が入る事があり、その連絡で初めて連帯保証人や緊急連絡先になる寸前であることを知る人がいます。当然初めて聞くわけですからその場は否定する事になります。
人間関係にもヒビが入りますので必ず事前に承諾を得る必要があります。

審査の流れについて

保証委託契約申込書に必要事項を記入した後はまず、必ず申込者本人に電話連絡があります。家賃保証会社が下記内容等を確認するためです。
・家賃保証会社申込みの意思確認
・保証委託契約申込書に記載した物件内容に相違がないか?(入居する物件名や号室・物件所在地・毎月の支払家賃等)
・審査を受ける本人に間違いがないか?また記載内容に虚偽が無いか?(生年月日・名前の読み方等)
※上記で説明したように連帯保証人予定者または緊急連絡先予定者にも確認の電話がある場合があります。
保証委託契約申込書に記載した内容の確認となります。くれぐれも事前承諾を忘れないようにしましょう。

ここでの注意点は、電話には協力的な態度で臨みましょう。保証会社から電話をしてくる人も人間です。明らかに暴力団のような言動やあまりにも適当な態度をとってしまうと審査にマイナス影響を及ぼします。

保証会社へ支払う金額は

おおむね3つの項目です

初回保証料
月額保証料
更新料

・初回保証料について
保証会社との保証委託契約金を賃借人が支払います。初回のみ1回限りです。
費用は保証会社のプランにより様々です。
例をあげると初回保証料50%とあるものは毎月支払う必要がある費用(家賃・共益費・駐車場料金)の合計が70,000円だとすると初回保証料は35,000円となります。
※例外で変動費と言われるものがあり、ガス料金・電気料金・水道代・浄水器代等があります。変動費は、NTT・ガス会社・水道局等と賃借人が直接契約をせず、賃貸人が使用料を回収している 物件によくある形態です。それらの金額も合算しての50%という事もあります。

初回保証料30%なら21,000円となります。

但し、初回保証料には最低保証料も設けられていることが多く、例えば初回保証料50%で最低保証料が20,000円に設定されている場合、家賃・共益費・駐車場利用料の合計が30,000円だとすると、初回保証料は15,000円ではなく20,000円になります。

最近は、契約金を抑えて入居促進を図る手法も増えてきており、初回保証料0円のプランもあります。
※この場合、次に説明する月額保証料が高くなる傾向がありますので、手放しで喜ぶと危険です。

・月額保証料について
保証会社のプランの中に月額保証料1%~3%程度の記載が多々あります。
月額保証ですから、当然毎月必要で引き落としがなされます。
例えば、月額保証料2%のプランだと、月々の合計支払いが70,000円の場合、1,400円が月額保証料になります。
したがって毎月引き落とされる金額は71,400円が引き落とされます。
A物件70,000円とB物件71,000円を比較して1,000円安いA物件にしたつもりが実は71,400円だったなんてことが多々起きてくるのです。
・更新料について
こちらも保証会社のプランによって有無があります。多く見受けられるのが年間10,000円程度かと思います。
家賃保証会社に毎年支払う必要があります。
1年ごとまたは2年ごとに引き落とされますので、預金口座に余裕資金が無いタイミングで更新料を引落されると残高不足となる事があります。また、多くの場合賃貸借契約の方でも更新料や更新事務手数料といった費用も引落しになる事もあり、さらには契約時に同時に加入した保険の満期のタイミングと重なる可能性も高いです。
賃貸借契約更新日が近くなってきたら残高不足には注意しましょう。
上記70,000円の例ですと、71,400円+10,000円(保証会社更新料)+10,000円(契約更新料)+保険代20,000円=111,400円が引落しという事になります。忘れているとびっくりしますよね。

以上の事から最近の部屋探しは家賃だけで判断しにくく、保証会社のプラン等も総合的に見ていく必要があります。

少し話が横道にずれますが、賃貸物件を探す際には賃貸借契約の更新料があります。保証会社への支払う金額同様に契約そのものもわかりにくくなっていることから、最近では公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の推奨する「めやす賃料表示」に注視するのも良いかもしれません。

審査結果の内容が他人に知られる?

審査結果は賃貸保証会社から申込をした不動産会社へ連絡されます。

審査が通れば、通常不動産会社が申込者へ審査通過の連絡とその後の流れについて連絡をくれるはずです。審査は早ければ当日に結果が分かる事もあります。※申込者・連帯保証人予定者が保証会社からの確認電話にスムーズに応対する事が前提。
保証会社からの確認がスムーズにいけば遅くとも3日以内には結果が出ていることが多いはずです。

あまりに不動産会社から連絡が無い場合は、申込者から不動産会社へ連絡してみることも良いでしょう。不動産会社の現場では、複数の契約を受け持っている場合、担当者が忘れていることが考えられます。

審査に通らなかった場合、その理由を洗いざらい不動産会社の担当者に知られてしまうのではないかと心配な方もいらっしゃるかもしれません。しかしご安心ください。家賃保証会社は絶対に審査が通らなかった理由を不動産会社へ知らせる事はありません。不承認という通知だけ送られてきます。また申込者本人が納得いかなくて不動産会社へ理由を聞いても、担当者もわからないので答えられません。

その場合、不動産会社が複数の保証会社と取引がある場合は、なんとか審査を通過させるために異なる家賃保証会社を紹介してくるケースもあります。

連帯保証人が不要な不動産会社はあるの?

連帯保証人が不要な不動産会社を探すという方法は現実的ではありません。なぜなら、賃貸契約の申し込み方法は、不動産会社内においても複数の申し込み方法がある場合が多いからです。Aという不動産会社が紹介する物件は全て連帯保証人不要というような一貫性が無いのです。むしろ物件により連帯保証人が必要だったり、不要だったりします。
賃貸保証会社は複数社あり、そのうちどの賃貸保証会社を使うか決めるのは、不動産管理会社であったり、賃貸人であったりと様々な要因で保証会社が決められているのが現実です。
ここで物件で家賃保証会社が必要か不要かを見極める方法をご紹介します。
それは賃貸物件を多く掲載しているポータルサイトです。今回はSUUMO(スーモ)です。
検索条件に連帯保証人不要の条件を指定して検索する方法です。この方法なら、家賃保証会社に加入が必要で、その保証会社の連帯保証人不要プランが採用されている物件が出てきます。その物件をどこの不動産会社が取り扱っているかを見れば、不動産会社とその物件自体の詳細情報まで簡単に調べることが出来ます。
実際のSUUMOの検索ページはこちらをクリック(ページの右下辺りにチェックカ所)

滞納してしまったらどうなるの?

家賃保証会社は、賃貸人に対し代位弁済を行います。つまり家賃保証会社が代わりに家賃を支払います。
当然に家賃保証会社は入居者への債権を持つことになります。
軽微な滞納であれば大きな問題は無いようですが、2か月分程度の滞納になると、若干強めの督促や催促を覚悟しなければなりませんが、基本的には紳士的に丁寧に連絡があるはずです。
しかし最終的に家賃を支払わなけれは法的整理という流れは避けられません。

尚、貸金業法の第21条「取立行為の規制」により家賃保証会社の常識を逸脱した取り立てや、明渡し要求は違法行為とされています。
一昔前に滞納者の賃貸物件の鍵を管理会社が勝手に交換したことで社会問題になったこともありました。

どんな賃貸保証会社があるの?賃貸保証会社一覧

・信販系保証会社
株式会社アプラス
株式会社エポスカード
オリエントコーポレーション
株式会社ジャックス
株式会社セゾン
株式会社ライフ

・全国賃貸保証業協会(LICC)
株式会社アルファー
アーク株式会社
株式会社エム・サポ
株式会社リクルートフォレントインシュア
エルズサポート株式会社
興和アシスト株式会社
株式会社近畿保証サービス
ジェイリース株式会社
全保連株式会社
賃住保証サービス株式会社
ホームネット株式会社

・賃貸保証機構(LGO)
ALEMO(アレモ)株式会社
日本セーフティー株式会社
フォーシーズ株式会社
株式会社Casa(カーサ)
※カーサは何かとお騒がせな会社です。下記参照
東京賃貸(倒産)→リプラス(倒産)→レントゴー保証(倒産)→(現在)Casa(カーサ)

・独立系保証会社
アールエムトラスト株式会社
株式会社アルファー
株式会社イントラスト
株式会社オーロラ
株式会社CAPCO AGENCY
株式会社近畿保証サービス
ジェイリース株式社
日本賃貸住宅保証機構株式会社
新日本信用保証株式会社
株式会社セブン総合保証協会
株式会社ナップ
日本賃貸保証株式会社(JID)

※上記保証会社は一例ですので記載のない会社も実在します。
・信販系保証会社の審査
クレジットカードの発行会社による家賃保証です。
クレジットカード審査のノウハウにより支払い能力などを審査していると思われます。
カード審査で利用される個人信用情報センター情報を、正規に照会する事ができる保証会社であり、これらの個人信用情報も、審査に活用されていると思われます。
おおむねクレジットカードを作れる人なら審査は通過する可能性が高いです

・全国賃貸保証業協会の審査
申込者の年収・職業・勤続年数・家族構成などで審査を行います。
全国賃貸保証業協会の加入業者間で連携しています。
しかし基本的には独自の審査となるため、比較的審査に通りやすいと言われています。
最近、全保連株式会社がTVコマーシャルで認知度を高めています。

・賃貸保証機構の審査
基本的に独自審査です。
賃貸保証機構に属している保証会社で異なった判断となる事もあります。

・独立系保証会社の審査
独自基準で審査を行っています。
こちらも保証会社により審査の判断が異なる事があります。

まとめ

賃貸保証会社は実社会の時代背景にマッチしており、不動産業界ではスムーズに浸透してきています。
今後もこの保証委託契約の件数が伸びていくと思われます。
ご自身も実はこの保証委託契約がある為に連帯保証人にならなくて済んでいる事に気づいてないだけかもしれません。
借りる側から見ると複雑で思わぬ費用も発生し損した気分になる人が多いようですが、賃借人・賃貸人の双方にメリットがる事も事実です。
もはや不動産業界では常識となっている保証委託契約ですので、多くの賃貸物件の選択肢を得るために受け入れる方が良いと思われます。

 

 

 

 

 

 

 


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